1/144 BAC TSR.2
(ピットロード)
2011 9/19完成

ピットロードの1/144 TSR.2です。

この作品は、以前製作したB-58AハスラーF-86Fセイバー同様に
イエローサブマリン秋葉原スケールショップ主催の1/144飛行機コンテスト、
「第3回いっちょんちょんコンテスト」に出品するため製作しました。

実はこのコンテストには別のキットで参加するつもりで製作を進めていたのですが、
諸事情によりそちらがお蔵入りになったので急遽このキットを製作することとなりました
予定変更を決めたのが9月頭だったので締め切り(9/25)に間に合うか微妙でしたが
キットが良かったこともあって何とか期間中に無事完成させることが出来ました。

[2011 10/18追記]
コンテストの結果ですが、ピットロード賞をいただくことが出来ました。
TSR.2は1950年代後半から60年代前半にかけてイギリスのBACで開発された試作爆撃機です。
"TSR"というのは"Tactical Strike Reconnaissance"の略で、低空を超音速で侵入し
核爆弾を投下する戦術爆撃機としてだけでなく、偵察機としての任務も与えられる予定でした。

そのために全天候作戦能力や低空での超音速飛行能力、1850kmの航続距離に加えて
不整地からのSTOL(短距離離着陸)など、当時としては無茶とも言える高性能が
要求されましたが、完成した試作機はこれらを満たすだけの性能を持っていたと言われています。

しかしその高性能さゆえに機体価格は高騰、さらに政権が軍事費削減を唱える労働党に
交代したことで開発計画は中止され、その開発研究機材等は全て破棄されました。
試作機の飛行まで禁止したその徹底ぶりには、一部では陰謀論も囁かれているようです。

結局、試作機のうち飛行したのは今回製作したXR219のみですが、この機体は後に破棄され
現在はXR220とXR222がイギリス国内の博物館にて展示されています。
…とまあ、こんな具合で「悲運の名機」的な扱いを受けているTSR.2ですが、
その美しいスタイルや開発エピソードからイギリスのみならず世界でも人気は根強く
2000年代に入ってエアフィックスから1/72新金型キットが世界限定1万個で発売されたり、
その直後にまさかの1/48新金型キットが出たり、更には架空のマーキングを再現する
別売りデカールが多数出たりと模型界でも何かと話題になりました。

日本での人気を語る上で外せないのは、やはりアニメ「ストラトス・フォー」シリーズでしょう。
美少女パイロットがTSR.2に乗って隕石を迎撃するという、何とも破天荒に思える作品ですが
妙にマニアックな航空関連の描写、TSR.2以上に超マイナーな機体の活躍、
そして「世界の駄っ作機」で有名な岡部いさく氏の本人役での登場等は大いに話題を呼びました。
OVAの完結から4年程経った今ではさすがに下火になってしまった印象ではありますが、
それでも昨年にはエアフィックスから1/72で隕石迎撃機仕様のTSR.2MSが発売され
(色んな意味で)モデラーの度肝を抜き、更に今年の11月にはピットロードから1/144が
発売予定と、未だに根強く残るファンにとっては嬉しい展開が続いています。
前置きが長くなりましたがキットの話。
数年前にアナウンスがあり、ようやく今年の春に発売された完全新金型キットです。
箱にMADE IN CHINAと書いてあるのでおそらく金型製作はトランペッターでしょうか。
パーツには多少バリや荒れがありますが、ちゃんと処理してやれば合いは比較的良く、
ディテールやプロポーションについてもかなり良好と言えると思います。
なお、エアインテーク周りは若干組み辛いので、仮組みと調整は念入りに。

今回は製作期間の制約から、着陸姿勢にするための改造(後述)以外には
機首下アンテナの作りなおしと着陸灯の追加、HUD投影レンズの追加等を行ったのみです。
ピトー管は作り直しづらいのでキットのままですが、意外とシャープで気に入っています。

塗装はキットの指示通りMr.カラー316番です。実機が試作機にしては意外と汚い印象だったので
下地にガイアのミディアムグレーIIを塗り、少し濃淡を残してみました。
デカールはキット付属品ですが、特に問題もなく扱いやすい良いデカールでした。
今回最大のポイント、着陸姿勢の再現。
試作機のテスト飛行映像で印象に残った着陸シーンを再現したいと思い、改造に挑戦しました。
改造ポイントは前脚オレオの延長、補助インテーク開状態、フラップダウン、水平尾翼後端です。

オレオは一旦前脚を分解して金属棒で伸ばした後にそれに合わせてトルクリンク(?)を組み付け。
補助インテークは穴開けるかわりに黒く塗って、プラ板で蓋を作っただけの超絶手抜き工作。
フラップは最初から分割されているので、下げた時に露出する付け根の部分をプラ材で追加。
水平尾翼はさすが蛇の目というべきか、オールフライング式の尾翼本体の後端に
更に昇降舵がある変態設計なので、舵面の左右をデザインナイフで切断、尾翼との分割線に
Pカッターやエッチングノコで切れ込みを入れ、折れない程度に軽く曲げて角度をつけています。
この昇降舵、製作するまで存在すら知らなかったのですが当時の映像や写真を見ると
ちゃんと動いているのが確認できますので興味のある方は探してみてください。
なお、エアブレーキは実機写真だと微妙に半開きの写真もあるのですが基本的には
閉じているようなので閉状態で製作しました。
今までコンテストに出品した1/144作品達と。
B-58AとTSR.2が並ぶ図はストラトス・フォーファンとしては感慨深いものがあります。

書き忘れていましたが、TSR.2のベースにはウェーブのTケースMを使用しています。
B-58の方はタミヤのディスプレイケースCなので一回り大きくなっています。
本当はサイズ合わせたほうが良いんでしょうがTSR.2には間延びしてしまうので…
ベースは前2作はプラ板に線をけがいて塗装していましたが、今回はインクジェット用厚紙を
使用して、少し動きのある感じの滑走路を印刷してみました。

製作当時も思いましたが、やっぱりB-58って想像以上に小さいです。
そして、開発時期に多少の差があるとはいえ同じ超音速爆撃機として設計されたにも関わらず
この似ても似つかないデザインの差はやはりお国柄の違いなんでしょうか…




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