1/72 F-16C -HISTORIC WINDHOVER-
(タミヤ)
2015 10/11完成




バンダイナムコのXbox360用ゲーム、"ACE COMBAT 6 解放への戦火"(以下AC6)より、
エメリア共和国軍東部防衛軍第8航空団第15飛行隊隊長、
TACネーム"ウインドホバー"ことダニエル・ポリーニの搭乗するF-16Cです。

第15飛行隊はプレイヤーの所属する第28飛行隊"ガルーダ隊"と同じ
グレースメリア空軍基地所属の第8航空団隷下の飛行隊です。
AC6で描かれたエメリア・エストバキア戦争においては、
全ての任務でガルーダ隊と共闘することとなりました。

最初のミッションでは冒頭、AWACSに次いで部隊番号とTACネームを名乗るため、
AC6を何周もプレイしている方にとっては聞き慣れた名前ではないでしょうか。

"ウインドホバー(Windhover)"は当初、あくまで隊長のTACネームという扱いでしたが
後のACシリーズでは第15飛行隊の部隊名として扱われる機会が多いように思います。

第15飛行隊には他にも"ラナー(Lanner)" "セイカー(Saker)"というパイロットが
所属しているのがゲーム内の無線で確認できます。いずれも隼の仲間であり、
おそらくは運用機体であるF-16の"ファルコン"に因んだものと思われます。

ちなみにWindhover=チョウゲンボウは小型の隼で、別名Kestrelとも呼ばれるようです。
ACファンの方はどちらかと言うと別名の方がピンとくるのではないでしょうか。



キットはタミヤの1/72 ウォーバードコレクションのブロック50(フル装備仕様)を使用。
製作時点では事実上の最新キットだったこともあり、少なくともプロポーションと
組みやすさに関してはほぼ満点を与えられる間違いなく決定版キットです。

それでも重箱の隅をつつくと、インジェクションシートの側面が真っ平らだったり
エンジンノズルの奥にはモールドが無かったりと、ディテールに関しては
若干ではありますが手を加える余地が残されています。

基本工作にかかる労力が最低限で済む分、今回はその分の労力をディテールアップと電飾、
飛行姿勢への改造、そして塗装に費やすことができました。そのおかげか、あまりストレスを
感じることなく自分の中ではなかなか上出来と言えるような作品に仕上げられたように思います。






今回製作したこのカラーリングはAC6のダウンロードコンテンツ(以下DLC)として配信された
"-HISTORIC WINDHOVER-"仕様のカラーリングであり、ゲーム内で登場する機体は
ガルーダ隊と同様、米軍の一般的な機体と同様の地味なカラーリングとなっています。

このカラーリングは前述のDLCの他、エースコンバットX2のカラーバリエーションや
エースコンバット・インフィニティ(以下ACINF)に特別機体として登場しています。

AC6のDLC版では垂直尾翼先端の部隊番号がガルーダと同じ「28」のままでしたが
ACINF版では「15」に修正されました(後述のハセガワのデカールには両方付属します)。
なお一見同じに見える両者ですが他にも主翼前縁アンテナが付け根まで白かったり、
一部コーションデータの有無など僅かながら違いが存在します。
今回はAC6版を基礎とし、部隊番号とコーションのみACINF版の要素を採り入れて製作しました。

塗装はまず最初に黄色や赤の部分を塗り、マスキングしてから黒の部分を塗装、
最後に迷彩塗装を重ねるようにして行いました。セオリーとは真逆かも知れませんが
マスキングのし易さから考えるとこちらの方が都合が良いのではないかと思います。

マスキングする上で若干面倒だったのが機首のアンチグレア部分です。
最初に赤を塗ってから縁取りを細切りのマスキングテープでマスクするのですが、
この丸みを帯びたラインのバランスが実に微妙で、ゲーム画面と何度も見比べながら
イメージ通りの形状となるまで何回もやり直す羽目になりました。
苦労した甲斐あって良い感じになったと自負していますが如何でしょうか?



このカラーリングのポイントとなる「赤」ですが、デカールに合わせて調色していくと
実は茶色に近いことに気付かされます。正確なレシピはありませんが参考までに、
今回調色した「赤」の約8割かそれ以上はMr.カラー7番「ブラウン(茶)」です。

その他、垂直尾翼先端の黄色はMr.カラー329番イエローを使用したほか、
機首や各翼の黒はMr.カラー125番カウリング色の上に、ガイアカラー075番
ニュートラルグレーVで若干濃淡をつけて塗装しました。

機体の制空迷彩は基本的にハセガワのMr.カラー塗装指示に準拠しています。
いつも通り下地を残し気味にしたかったので最初にガイアカラー221 ジャーマングレーで
全体を塗装した上から、Mr.カラー305番(後部)→308番(下面)→306番(機首)→307番(レドーム)の
順番で塗っていきました。308番より濃い306番が後なのは塗りやすさの都合です。
塗り分けには型紙も使用しましたが、最終的には一部フリーハンドでボケ足を調整しています。



デカールはコーションデータ類はキット付属のもの、各種エンブレムや機番は
ハセガワの1/72 F-15E"ガルーダ1"に付属するおまけデカールを使用しています。
ハセガワのデカールはあくまで「おまけ」扱いながら、その再現度と充実ぶりは
普通に1つのキットとしても発売できるレベルとなっており大変有り難い存在です。

特にこのウインドホバーに関しては、マスキングで均一に仕上げるのが難しそうな
主翼端の鳥の羽のような塗り分けも用意されており、今回も有り難く使用させて貰いました。
主翼前縁の細い赤のライン(塗装)と重なりますが、一応目視でも全くわからないレベルまで
色合わせを行ったので特に違和感なく仕上げることが出来ました。

唯一気になったのは垂直尾翼の第8航空師団マークで、下地に白が無いために
黒の上に貼り付けると下の方の細い文字は透けて見えてしまいます。
致し方ない部分ではあると思うのですが、何とかならないかなと…



話が前後しますが、組み立てについて。
前述の通り、このキットは全体に緻密なモールドが施されている反面
射出座席やノズル周りは大幅にディテールが省略されています。

電飾する上でノズルのディテールが重要なのは言うまでもありませんが、
飛行姿勢では着陸脚が無い分、コクピットのディテールが見せ場の一つになると
思われますので今回はどちらにも主にアフターパーツによるディテールアップを施しました。

コクピットにはエデュアルドのエッチング(品番:SS508)とレジン製射出座席(品番:EDU672047)を使用。
このエッチングは計器盤やコンソール、射出ハンドル等のパーツが塗装済みで、
1/72スケールでは塗装するよりもスッキリかつ精密な印象の仕上がりを得ることができます。
その他、HUDのフレームやコクピット後方ダクトの網目等はまさしく本領発揮といった所でしょうか。

射出座席の方は、レジンのアフターパーツにしてはモールドが過剰でない反面
成形状態がシャープであり、塗り分けてスミ入れするだけでかなり良い感じになります。
また、レジンのシートではシートベルトがモールドとなっていることが多いですが
この製品では付属のエッチングを使用するため、フィギュアを座らせるにはむしろ好都合でした。

余談ですが、前者のエッチングパーツにはキットの射出座席用のパーツも複数含まれています。
立体感では若干劣りますが、ポイントは抑えられているのでこちらを使用するのもアリかと思います。

コクピットはその他、ディテールアップという程ではありませんがHUDにハセガワの
フィニッシュシリーズTF902 偏光フィニッシュ グリーン〜マゼンタを貼り付けてみました。
また、HUDの投影レンズはいつも通りウェーブのH・アイズで追加しています。



パイロットフィギュアはキットにも付属しますが、ゲーム内の無線と同時に表示される映像で
ダニエル・ポリーニは旧型のヘルメットを着用しているのが確認できますので、
今回は頭部をフジミのF-14付属のパイロットから流用しました。

胴体も同キットから、と思ったのですが、若干大柄でタミヤのF-16には収まらなかったため
苦肉の策として、かつて製作を断念したハセガワの震電IIからパイロットを救出(?)して、
首から下を流用することとなりました。こちらは問題なく収まりましたが、何となく頭でっかち気味に
なってしまったような…?言われなければ気付かないレベルであるとは思いますが…

前述のコクピット映像ではヘルメットの左側面が見えるのですが、明らかにウインドホバーの
部隊マークと星(?)が描かれているのが確認できるので筆でそれっぽく描き込んでいます。
また、前側と右側面は見えないため、適当にTACネーム的な物を右前側に入れてみました。
あまり拡大すると失笑レベルですが、肉眼で見る分には雰囲気出てるのではないかと…



キャノピーの合いは素晴らしく良く、後から接着しても問題なかっただろうとは思いますが
やはり機体との一体感を持たせたかったので先に接着、密閉してから塗装を行いました。

成型色は無色透明だったので裏側からスモークを吹いています。塗装した時点では
少し濃いような気もしましたが、完成してしまえばあまり違和感ないように思います。

ちなみにキャノピー透明部分の周囲はシーリング?で別色になってるのを再現するため、
先に濃いグレーを塗り、マスキングしてから機体色の黒の方を塗装しましたが
殆ど目立ちませんね…1つ上の画像の方で言われてみれば分かるレベル?

ところでこの画像で、バルカン砲の周囲が少し煤けた感じになっているのが伝わるでしょうか?
今回はスミ入れをクレオスのMr.ウェザリングカラーで行った後、局部的にエアブラシで
吹き付けるなどして要所要所にウェザリングを施しています。



キットのノズル外側のモールドは決して悪くなく、むしろ良い方ではあると思うのですが
内側の再現度は最小限で、また奥の突き当たりには何のモールドもありません。
奥のモールドはLED仕込めばあまり関係ありませんが、折角アフターパーツが出ているので
エンジンノズルにもやはりエデュアルドのレジンパーツ(品番:EDU672045)を使用しました。

こちらのパーツも大変成形状態が良く、思わず惚れ惚れしてしまうモールドです。
内側は白で塗装後にMr.カラー45番セールカラーで黄ばんだ感じの汚しを加え、その上から
エナメル塗料でスス状の汚れを再現してみました。発光させるとよく見えませんが…

外側はクレオスのスーパーメタリックカラーSM05スーパーチタンで塗装しています。
また、アイリス板が重なる部分の三角形状の模様は塗装だと再現が難しそうだったので
ハセガワのフィニッシュシリーズTF915、クリアースモークフィニッシュを切り出して貼り付けました。
マスキングテープ切って貼るのと同じ位の労力で結構良い感じに仕上がるのでオススメです。



電飾については、今回はアフターバーナーだけ点灯させるため、LEDとボタン電池ボックスのみの
最小限の構成としました。LEDの足を立体的に曲げて電池ボックスの端子に直接ハンダ付けすることで
一体化し、ノズルパーツの突き当たりにプラ板で作った壁にLEDを差し込んで固定しています。
LEDの先端にはレジンパーツ付属のアフターバーナーリングのエッチングを接着して、
点灯するとアフターバーナーリングがくっきりと浮かび上がるようにしました。

スイッチは無く、ボタン電池の取り外しで電飾をON/OFFします。そのためノズルは取り外し式にする
必要がありましたが、今回はノズル側からプラパイプを2本伸ばし、それを機体側に設置した受けに
差し込む方式を採りました。プラパイプの内側と受けの両方にネオジム磁石が仕込んであり、
これによりカッチリとした保持力と、スムーズな取り外しを両立させています。

この取り外し方式を成立させるにはノズルと胴体パーツの合わせが肝心となりますが、
エデュアルドのパーツが胴体パーツに驚くほどピッタリだったため、殆ど苦労はありませんでした。



(一枚上画像の続き)今回もスタンドはハセガワのフレキシブルスタンドを機体との接続部を
ネジ止め式に改造して使用しました。ネームプレートはプリンターで写真用紙に印刷したものを
コンパスカッターで切り出して、四隅のネオジム磁石で挟み込むようにして固定しています。


機首のピトー管はファインモールドの真鍮製パーツを使用。元々がハセガワ用であるため
そのままだと基部が太くなってしまうので、キットのレドーム側を少し削ってラインを繋げています。

また、ピトー管を真鍮製に交換したことで、レドーム付け根のAOAプローブがキットのままだと
シャープさに欠けて見えてしまうので、マチ針の先端を切り取ったものに置き換えました。
ここも1/72用の真鍮パーツがあると有り難いのですが…。

それと殆ど分からないとは思いますが、レドームのライトングアレスター付け根、
リベット状の出っ張りを一部削ってしまったので、ピンバイスで穴を開けアドラーズネストの
リベットヘッドSS(洋白製)を埋め込んでいます。



F-16系統機体の宿命とも言える各翼端に存在する放電索は、基部にピンバイスで穴を開け
0.2mmの真鍮線を差し込んで再現しました。接着後に面相筆で全体を黒、付け根をシルバー、
先端を黄色に塗り分けます。かなり細かい作業になりますが、精密感と満足感が上がる気がします。

かつてF-2を製作した時は思った位置に穴開け出来ず結構苦労しましたが、最近はタミヤから
「精密ドリル刃」の商品名で先端以外の軸経が1.0mmとなっているドリルが発売されており、
こちらを使用することでかなり穴開けが楽になりましたので、お困りの方は是非お試しを。

ところで、脚収納庫後ろにチラッと見えるライトはクリアー化しても微妙そうに思えたので
ハイキューパーツのセンサー用メタリックシールを使用してみました。僅かに丸みがあり、
キラッと反射するので少し大袈裟かも知れませんが良いアクセントになったかと思います。
なお、胴体後方左右の航法灯もこれを使用して再現しています。他の灯火類は
クリアーパーツが付属する部分以外、今回は特にクリアー化等は行っていません。



武装はAIM-9M×2とAIM-120C×4、いずれもタミヤのキット付属パーツを使用しています。
キット標準のAGM-88を積んだSEAD装備とは違う軽快なイメージで仕上げたかったのと、
胴体下の物はスタンド取付けの都合からドロップタンクの搭載は無しとしました。

この形態で製作するにあたり、キットにはAIM-120Cと翼下のパイロンが2発分しか含まれておらず
ハセガワのウェポンセットの使用も検討しましたが、若干見た目と出来に差があったため断念。
結局同じキットをもう一箱購入してそちらから流用しました。ちなみにタミヤカスタマーサービスで
取り寄せも可能ですが、ランナー代とデカール代、何より取り寄せの手間を考えると…

ところで実機ではほとんど見ないこの搭載形態ですが、エースコンバットシリーズでは
ACZERO以降、このパターンで搭載していることが多い印象があります。
ウインドホバーはAC6のDLCとACINFは対空のイメージで推されているので今回はこの形態で
製作しましたが、一応AC6の方ではAIM-120C以外に無誘導爆弾やロケットランチャーを装備可能です



キットのパーツは流石ディテール・形状共に良好で、省略されがちなコーションデータも
デカールで再現されていて好印象です。ただ、AIM-9Mの方は後方フィンの分割で変な所に
合せ目が来てしまい、ノズル部が真円になりません。可能な限り整形しましたが手間取りました。
この分割、個人的にはあまり良いとは思わないのですが最近のキットでは増えてきたような…

AIM-9M、AIM-120C共に尾部にはピンバイスで浅く穴を開け、実機に見られる蓋(?)を
スミ入れの要領で塗装してみました(写真では黒にしか見えませんが…)
また、AIM-9Mは前部にあるリング状の部分にハセガワのミラーフィニッシュの細切りを巻き
アクセントとしてみました。マスキングするより綺麗に仕上がりそう、というのが元の意図ですが…

ところで左主翼の後方と水平尾翼の前方、チャフ/フレアディスペンサー部にはちゃんと
モールドがあったので、実機を参考にスミ入れの要領で赤(フレア)と白(チャフ)に塗っておきました。
大スケールなら歯抜け状態を再現すると面白そうですが、見た目の綺麗さ優先で満載状態に。
<追記>
こちらの作品は大日本絵画の隔月刊誌、「スケールアヴィエーション」主催の
2015年度スケールアヴィエーション・コンベンションに応募し、優秀賞を受賞しました。

2016年1月号の結果発表ではプロ撮影の美麗な写真と共に、
49Pを1ページ丸々使って紹介して頂いておりますので機会があればご覧ください。




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